2019/8/26 追記
働き方改革してますかー?今回のブログ担当の井上です。お待たせいたしました。バス・トラック・タクシーのためのホワイトな経営<後編>です。
前編はこちらから
バス・トラック・タクシーのためのホワイトな経営<前編>|タイガーブログ
前回のおさらいですが、ホワイト経営改め、
「運転者職場環境良好度認証制度」です。どうしても名前が長くて覚えられない・・・。
因みに前回、「ドライバー確保の助力になるかもしれない制度」と書きましたが、
運送業界の求人倍率は
トラックドライバー:3.03倍
運送業全体 :3.01倍
程です。以下に運送業界が困っているか見て取れる数字です。ドライバーが単純に少ないのでこの認証制度でどんなことができるのか掘り下げていきたいと思います。
尚、前回の記事をご覧になっていない方はこちらからどうぞ。
目次
1)ドライバーを募集したい
2)認証制度の基本的な観点
3)認証制度の審査方法
4)認証制度の特典(インセンティブ)
5)2019/8/26追記 運輸運送業の職場の約83%に労働法令違反
1)ドライバーを募集したい
国土交通省の『ホワイト経営の「見える化」検討会報告書』からの抜粋になりますが、
2)認証制度の基本的な観点
基本は以下のような考え方で進めていくそうです。
2)ー1.基本的な観点
①労働環境の評価・認証をすることで求職者への情報提供のために行う
②認証項目の達成状況に応じ、「一つ星」・「二つ星」・「三つ星」の3段階で認証 する
③認証は中立的な民間団体が行う。尚、民間団体は公募する。
④認証を受けるには申請が必要。申請には費用がかかる
⑤認証制度は定期的に見直しをかける。
大まかに書くとこんな感じです。認証には様々な条件や制約事項もあります。
2)-2.条件・制約事項
①認証制度への申請は運送事業許可の取得後3年以上経過していることが条件です。
②いきなり二つ星や三つ星を申請することはできません。
まずは一つ星の認証を受けてから始めて、翌年により上位の認証に申請が可能になります。
③認証の有効期間は2年間。
有効期限が切れたら再申請が必要です。
④認証単位は事業者単位。
複数の都道府県に事業所を有する場合は「○○県のすべての事業所」でもOK。尚、認証制度の定着状況に応じて、2回目以降の申請は有効期限延長も検討するそうです。なんか、免許みたいですね。
3)認証制度の審査方法
認証には審査が必要です。基本的には以下の6点の項目で評価をするようです。
A 法令遵守等
B 労働時間・休日
C 心身の健康
D 安心・安定
E 多様な人材の確保・育成
F 自主性・先進性等
具体的な内容は、これから詰めていく予定なので詳細は明らかになっていません。この基準をベースに書類審査がメインとなります。一定割合で対面での審査も発生するそうです。
現時点では、主に認証段階の高いもの(「二つ星」・「三つ星」など)では対面審査が必要ではないかと議論されています。対面審査では書類に虚偽がないか判定をするために、現場に訪問してデジタコの運転日報や乗務記録、その他書類をチェックするそうです。
虚偽が見つかると、当然「認証取消」もあります。認証取消にあった事業者は3年間申請ができない仕組みなので、まあ、虚偽報告はしないのが賢明だと思います。
4)認証制度の特典(インセンティブ)
認証を受けた事業者には、以下のような特典があります。
・プレスリリース
・認証事業者の企業名や情報を認証団体HPに掲載
求人の宣伝広告を国の機関で出してくれているようなものなので、地味に強烈だと思います。
ただし気を付けないといけないのは、この認証制度が普及すると認証を受けているが普通になってしまうので、この認証制度に参加するなら、「スタートダッシュ」をかける必要があると個人的には思います。
所謂、先行者特需というやつです。
これが一番具体的に書かれていたインセンティブですが、他にも検討はしているようです。例えば、
・セールスポイントなどをHP上に公表できる
・「ホワイト物流」推進運動を通じた認証トラック事業者の積極的活用の推奨
・ハローワーク所内やインターネットサービスを通じ、認証制度及び認証事業者の周知
・一般監査の端緒から「長期間監査を実施していないこと」を除外
・補助金の優先採択 等
ただし、あくまで「検討中」なので上記のものが採用されるかどうかは別問題なので誤解なきよう。詳しくは国土交通省のHPをご参照ください。
運送業界も様々な外的要因で大きく変革を迎えようとしています。まだまだ、検討段階の内容が多いのでまた具体的な施策が出てきたらご紹介するのと、どこかのタイミングで「ホワイト物流」にも触れていきたいと思います。ホワイト経営がドライバー需要に対しての施策なら、ホワイト物流は物流全体の効率化を目的とした施策です。
ホワイト物流のポータルサイトが凄い分かりやすいので一度ご覧ください。今回はこれで、失礼いたします。
5)2019/8/26追記 運輸運送業の職場の約83%に労働法令違反
厚生労働省から興味的なデータが公開されました。平成30年度の現場での監査監督により発覚した労働基準法違反の内容になります。以下は一部のデータを抜粋したものです。
■ 主な労働基準関係法令違反事項
(1)労働時間(55.5%)
(2)割増賃金の支払(21.1%)
(3)休日(4.4%)
■ 主な改善基準告示違反事項
(1)最大拘束時間(46.4%)
(2)総拘束時間(38.8%)
(3)休息期間(32.4%)
バス・トラック・タクシーのためのホワイトな経営<前編>でもご紹介しましたが、改善基準告示違反では最大拘束時間を違反しているケースが多いようです。拘束時間が違反しているということは労働時間や割増賃金の問題にも当然影響があるので、上位にランクインされているのだと推察します。 厚労省の「自動車運転者を使用する事業場に対する平成30年の監督指導、送検等の状況を公表します」の内容からの抜粋ですが、
『H30年度は監督指導を実施した事業場は6,531事業場。このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは、5,424事業場(83.1%)』
とこの結果は非常に興味深い情報です。というのも、平成26年度は4,279件中2510件が改善基準告示違反という結果がありますが、明らかに監査している事業場が年々増えているのです。これにはからくりがあるのですが、「運輸安全マネジメント2009」という取り組みを国土交通省が行っているのですが、この中には監査員増員計画も含まれているのです。つまり年々監査員は増員されていくので、当然監査する事業所も増えていくという仕組みになっているのです。
今までは監督指導は「運が悪かった」で済んでいましたが、今後は監査が来る可能性が高く、厳しくなるので他人事では済まないのです。何しろ83.1%の事業場で労働基準関係の法令違反が出ているので運輸運送業界は今後狙い撃ちされる可能性が高いと私は推測します。運転者職場環境良好度認証制度の認定を取ろうとすると労務管理関連の見直しも必然的にやらざるを得ないので、認定を取る前提で走り出せばこういった問題も結果的に解決できるかもしれませんね。
新しい情報がはいりましたらまた追記させていただきます。では。