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運送業必読!2024改善基準告示【なぜ遵守すべきなのか】

昨年の11月に『改善基準告示が改正されます』という記事を書きました。その後、12月23日に改正が行われました。いよいよ本決まりとなった改善基準告示について、改めて解説していきます。※本記事で紹介するのはトラックの改善基準告示となります。


 

改善基準告示の主な要点だけまとめ

最初に、新改善基準告示(改正された改善基準告示を本記事内では便宜上こう呼びます)の主な要点だけまとめておきます。

・2024年(令和6年)4月1日より施行
・1年間の拘束時間3300時間以内※
・1か月の拘束時間284時間以内※
・1日の休息期間11時間以上を基本とし、最低でも9時間以上※
※例外あり。詳細は記事内で後述。


 

改正された改善基準告示はいつから適用される?

新改善基準告示は、2024年(令和6年)4月1日より施行されます。
また、改善基準告示から話が逸れますが、2024年(令和6年)4月1日より、働き方改革関連法により罰則付きの時間外労働の上限規制(年間960時間)もスタートします。この960時間という数字は労使協定を結んだとて、超えることの出来ない数字だというのは覚えておいてください。これが運送業の【2024年問題】と言われるものです。


 

【2024改正】改善基準告示の内容

こちらは旧来の改善基準告示の内容と表にて比較すると以下のようになっています。表中にも記載していますが、今回の改正では『運転時間・隔日勤務特例・フェリー特例・休日労働』に関しては、現行のままとなっております。

縦長なので表だけ折りたたんでいます。記事後ろにてそれぞれの解説をしています。

改善基準告示 変更点の内容比較表(クリックで展開)



画像をクリックして拡大

 

拘束時間

拘束時間の定義は(労働時間+休憩時間)となります。例えば、1日6時間30分運転し、積卸やその他業務の時間が1時間、荷待ちが30分、休憩が1時間15分、だとすると、拘束時間は9時間15分となります。(荷待ちも拘束時間に含まれる)

  • 1年間の拘束時間
  • 3400時間が上限となります。
    ただし、これは労使協定を締結した場合で、原則として1年間の拘束時間は、3300時間以内となります。

    例外として労使協定を結んで年間の拘束時間を3400時間に延長する場合には、以下の条件がついてきます。
    ・拘束時間が1か月284時間を超えるのは連続3か月まで
    ・拘束時間を1か月310時間以内とするのは年6か月まで
    ・1か月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努めること

  • 1か月の拘束時間
  • 原則284時間以内となります。
    年間拘束時間でも触れましたが、労使協定を締結することにより1か月の拘束時間の上限を310時間以内まで、とすることができます。
    前述の通り、284時間超は連続3か月までと、310時間以内とするのは年間6か月までとなります。

  • 1日の拘束時間
  • 原則13時間以内となります。
    延長する場合でも上限を15時間とし、14時間を超えるのは週2回までが目安となります。
    ただし、一週間における運行がすべて長距離運行の場合、一度の運行における休息期間が運転者の住所地以外の場合は、一週間のうち二度まで最大拘束時間を16時間とすることができます。

 

休息期間

休息期間とはドライバーが自由に使える時間として仕事から完全に解放された期間のことを指します。荷待ちや仕事中の休憩時間は含まれません。

勤務終了後、継続11時間以上となるよう努めることを基本とし休息期間が継続9時間を下回らないものとします。

ただし、長距離運行の場合、一週間に2回まで休息期間を継続8時間とすることができます。この場合、一度の運行終了後、継続12時間以上の休息を与えないといけません。

連続運転時間

従来通り4時間以内という部分に変わりはありません。
しかし、色々と補足が追加になってます。

運転の中断時には原則として休憩を与えるものとして、一回おおむね連続10分以上、合計30分以上が必要とされています。
また、SAやPA等に駐車または停車できないため連続運転時間が4時間を超える場合は、4時間30分まで延長することができます。

予期しえない事象

これは、新改善基準告示から追加となったものです。内容は以下の通り。

予期しえない事象への対応時間を、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間から除くことが出来ます。また、勤務終了後は通常通りの休息期間(継続11時間以上を基本として9時間を下回らない)を与えないといけません。

予期しえない事象とは以下の通りです。

  • ・運転中に車両が予期せず故障したこと
  • ・運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航する
  • ・運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖されるまたは渋滞する
  • ・異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運航が困難となったこと

※上記の場合において、運転日報上の記録に加え、客観的な記録(公的機関のHP情報等)が必要となります。

分割休息特例

業務の都合上、継続9時間以上の休息期間を与えることが困難な場合、一定期間(1か月程度を限度とする)における、休息期間を拘束期間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることが出来るものです。しかし以下の条件があります。

  • ・分割して休息を取る場合は、1回あたり3時間以上とし、3分割を限度
  • ・休息期間の合計は、2分割:10時間以上、3分割:12時間以上
  • ・3分割が連続しないように努める
  • ・全勤務回数の1/2を限度

色々条件はありますが、ざっくり言うと、1か月間は休息期間を分割してもいいけど、その間分割した場合に取らないといけない休息期間は通常時より多くなる、というところでしょう。

2人乗務特例

””乗務員が同時に1台の車両に2人以上乗務する場合において、車両内に身体を伸ばして休息できる設備を有する時、拘束時間を「20時間」まで延長し、休息期間を「4時間」まで短縮することが出来ます。””ここまでは、改正前の内容と同じです。新改善基準告示では、ここに以下の例外が加わっています。

ただし、身体を伸ばして休息できる設備が自動車運転者のためのベッド又はこれに準ずるものとして局長が定める設備に該当する場合で、かつ、勤務終了後に継続11時間以上の休息期間を与える場合、最大拘束時間を「24時間」まで延長することが出来ます。さらにこの場合に「8時間以上」の仮眠を与える場合には当該拘束時間を「28時間」まで延長することができます。

  • 局長が定める設備とは、以下に該当する車両内ベッドを指します。
  • ・長さ198cm以上、かつ、幅80cm以上の連続した平面であること
  • ・クッション材等により走行中の路面等から衝撃が緩和されるものであること

↑の部分は、改善基準告示の内容を写しているだけなのですが、ここで疑問が生まれます。皆さんもご存じだとは思いますが、走行中に大型トラックの座席後ろのスペースで寝るのは、ほとんどの場合において『道路交通法上』では違反にあたります。

ベッド等の条件で『クッション材等により走行中の路面等から衝撃が緩和されるものであること』これは、走行中に寝ることを前提とした記述に見えます。道路交通法上で違反なのに、改善基準告示では走行中に寝させようとしているという、何の為なのかわからない改正というのが正直な感想です。

将来的に走行中に寝れるベッドを備えた車両の登場、そして道路交通法の改正の匂わせ?ということで、今回の改善基準告示の改正で唯一、そして最大の謎が生まれてしまいました。この点についてどういう運用が適正なのかは、みなさま最寄りの運輸支局に問合せしてみてください。

運転時間・隔日勤務特例・フェリー特例・休日労働

これらに関しては現行のままとなります。

●運転時間(現行)
2日平均1日あたり9時間以内
2週平均1週あたり44時間以内

●隔日勤務特例(現行)
2暦日の拘束時間は21時間、休息期間は20時間。
※例外:仮眠施設で夜間4時間以上の仮眠を与える場合、2暦日の拘束時間を24時間まで延長可(ただし、2週間に3回まで)
2週間の拘束時間は126時間を超えることは出来ない。

●フェリー特例(現行)
フェリー乗船時間は原則として休息期間として取り扱う。この場合において、休息期間として与えるべき時間から減算すること。ただし、減算後の休息期間は、2人乗務の場合を除き、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの時間の1/2を下回ってはならないものとする。なお、フェリー乗船時間が「8時間(2人乗務の場合は4時間)」を超える場合には、原則としてフェリー下船時間から次の勤務が開始されるものであること。

●休日労働(現行)
休日労働の回数は2週間について1回を超えないものとし、当該休日労働によって、年間・月間・1日の拘束時間の限度を超えないこと。


 

なぜ改善基準告示を守らないといけないのか

さぁ、ここまで改正された新改善基準告示を紹介してきました。次のテーマは、なぜ改善基準告示を守らないといけないのか、です。決まっているルールだから、と言ってしまえば元も子もないのですが「なぜ守らないといけないのか」の前に、改善基準告示が改正される背景をみてみましょう。

これは働き方改革に伴い『労働時間を短縮しよう』という動きが根底にあります。

働き方改革は、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。   ※厚労省のHPより抜粋

この文章だけを見ると働き方改革が『労働時間の短縮』とは直結しないような気がしてきますね。さらに労働時間短縮の必要性について深堀すると、日本人の2020年における平均年間労働時間は1,598時間。(OECD統計より)

欧米諸国に比べて230時間以上、日数にして約10日多いという調査結果があります。
これに加えてサービス残業のように労働時間にカウントされない労働が日本では多いと言われております。

今後の日本は少子高齢化によって、人手不足や労働力の低下が深刻になっていくことが予想されております。長時間労働は健康リスクが高いことが証明されていることから、働き方改革の一環として労働時間の短縮を進め、労働者の健康を守っていく必要性が高まっていると言えそうです。

『労働時間の短縮』は労働者が減っていくことが予想される中で、今いる労働者が病気等で働けなくなってしまうと、想定の減少分を上回る労働力の減少が起きてしまうので、それを防ぐためのようですね。ちなみにこんなサイトもできたようです。

自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト|厚生労働省

この章のまとめとしては、労働者の健康を守るために改善基準告示を守らないといけない、として締めくくります。では、次の章でこの改善基準告示を守らなかった場合にどうなるのかを少し見てみましょう。


 

改善基準告示を違反するとどうなる?!

まず、改善基準告示自体は法律ではありません。前回の改善基準告示ブログでも書きましたが、国が定めて公開している自動車運転従事者の労働に関する基準のことを【改善基準告示】と呼びます。基準だから法律なんじゃないの?と思われるかもしれませんが、どうやら違うようです。

じゃあ、法律じゃないなら違反しても大丈夫なのか?と言うとそうではありません。違反が発覚すると労働基準監督署の監査・指導や、国土交通省から行政処分を受けます。改善基準告示は法律でないものの、違反をすると罰則付きということで少し不思議な感じがしますね。

では、実際に国土交通省のページに載っていた違反の際の行政処分の内容を見てみましょう。


※自動車運送事業者に対する行政処分等の基準を改正します|国土交通省 より

上の画像右側の部分、乗務時間等告示順守違反の項目を参照ください。拘束時間の違反があった場合は、最低でも10日車の処分が下されることになります。表にすると以下の通りです。

事項 初回違反 再違反
各事項の未遵守計5件以下 警告 10日車
各事項の未遵守計6件以上15件以下 10日車 20日車
各事項の未遵守計16件以上(注2) 20日車 40日車
上記と別立てで追加となる違反分
各事項の未遵守1件 10日車 20日車
各事項の未遵守2件以上 20日車 40日車

貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について|国土交通省 より


これに加え、行政処分による停止車両数の割合が最大5割となっています。これは、仮に行政処分が100日車という処分があったとして、10台ある営業所の場合、5台を20日間止めないといけないという計算になります。

「処分が下されるから改善基準告示を守る」という訳ではないですが、ペナルティが重いので、しっかりと守っていかないといけないですね。では、運送会社が改善基準告示を守っていくにはどうしたらいいのでしょうか。


 

改善基準告示を守るには!

だいぶ長い記事になってきたので、読んでる皆様も疲れてきたと思います。最後はこのテーマですが、最初にお伝えしておくと製品紹介です。改善基準告示を守るには、記録を取っておくことが欠かせません。そもそも記録がないと、あとどれくらいで拘束時間の限度オーバーなのかもわかりませんからね。

ここで『運送会社専用』の勤怠管理ツールのご紹介です。

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そして今回ご紹介した新改善基準告示に関しても、現在の製品から無料でアップデート対応となるそうで、今から正確な勤怠管理に取り組むのにうってつけです。

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